あなたは「職場の人達と仲良くしなければならない』という義務感に縛られていませんか。
実は、職場での近い距離感は、生産性を下げるだけでなく、ストレスが増えるリスクがあることが研究により分かっています。
ここでは心理学を基に、なぜ職場では人との適切な距離感が必要なのか、そして嫌われずに距離を置く具体的な手法をご紹介します。
距離が近すぎると、息が詰まる

参考:Harris & Kacmar(2006)を基に数値を省略のうえ作成
アメリカの経営学者ハリス氏たちがおこなった、企業現場での調査結果によると、上司との関係性が悪くても良すぎても、息が詰まってしまうというリスクがあることがわかっています。関係性が悪いとストレスが溜まるのは当然のことです。しかし、関係性が良すぎても、上司の期待以上に応えなければならないというストレスが増えるのです。
上司も同じです。私も経験がありますが、部下との距離が近いがゆえに嫌われたくないという思いが出てしまい、仕事の指摘ができなくなる等のリスクが発生します。
つまり上司と部下は友達のような近い関係はベストではないのです。
太田章代適度な距離感こそが、お互いのプロ意識と心の健康を守るための大切な鍵になりますよ。
適度な距離感が成果につながる理由
なぜ適度な距離感があると成果につながるのでしょうか。それには明確な理由があるのでみていきましょう。
① “社会的交換理論”による疲れを防ぐ
アメリカの社会学者のジョージ・ホーマンズ(George C. Homans)が提唱した「社会的交換理論」は、人間の社会的行動を「報酬とコストのバランス」という視点から説明する理論です。簡単に言うと、人間は『見返り(報酬)を期待し、なるべく損(コスト)を避けるように行動する』生き物ということです。
今までの友人を思い浮かべてください。与えるばかりで見返りがない人とは、関係が続いていないのではないでしょうか。「見返りなんて求めるな」と言われますが、求めてしまうのが人間なのです。
職場で距離が近すぎると、『この間仕事を手伝ったのに、なぜ助けてくれないのか』という期待が生まれ、裏切られた時に怒りに変わります。最初から距離感があれば、この期待値がコントロールされ、感情の起伏が最小限で済みます。よって平常心で仕事ができ、成果につながっていきます。
②“集団思考”による判断の偏りを防ぐ
過度に仲が良いと、『集団思考(グループシンク)』という罠にハマります。集団思考とは、「仲良くすること」が優先されてしまい、本当は正しいかどうかを十分に考えなくなる状態のことです。
「空気を壊したくない」「上司の意見に反論しにくい」など、仲の良さが裏目に出てしまいます。仲間に同調しなければならないという圧力が働き、客観的な判断ができなくなり成果につながりにくくなります。適度な距離感を保つことで、感情に流されずに正しい判断をすることができます。
太田章代「それはおかしい」と言える関係性がベストですね。
「冷たい人」にならない“戦略的”距離感の保ち方
では、孤立せずにほどよい距離感を築くにはどうすればいいのでしょうか。心理テクニックをご紹介します。
「ハロー効果」を利用する
心理学の『ハロー効果』とは、目立つ特徴が全体の評価に影響してしまう心理現象です。例えば『挨拶が明るい』『笑顔がいい』といった目立つ印象があるだけで、『あの人はいい人だ』と判断してしまうという現象です。
ここさえ押さえておけば、野球の大谷翔平選手のように先輩からの飲み会のお誘いを断ろうが、『忙しい人なんだな』と思われるだけで、悪印象にはなりません。
職場は同じ目標を達成するためのチームです。普段から気持ちの良い言動を意識することで、良い関係が築きやすくなります。
まとめ
・適度な距離感があるとストレスが減り、仕事の成果も出やすい
・普段から良い印象を与えていると、距離をとっても悪印象にならない
職場は友達作りの場ではなく、価値を提供して対価を得る場です。
適度な距離をとることは、冷酷になることではなく、お互いの心を守り最高のパフォーマンスを出すための『優しさ』でもあるのです。
上司や部下との関係性で疲れている方は、距離感を見直してはいかがでしょうか。



