こんにちは。人材育成トレーナーの太田章代です。
「新人が全然電話に出てくれない」という悩みを、会社員の方からよく伺います。電話が鳴っているのに出ないと、やる気がないように見えてしまいますよね。でも実際に新人さんに聞いてみると、出る気はあるのです。「出たいけれど、出られない」と言います。
この記事では、新人が電話に出られない3つの理由、上司がやってしまいがちなNGな教え方、そして新人が自信を持って電話に出られるようになる4段階の教え方と職場でできる練習方法を解説します。新人に電話応対を教える上司・先輩の方はもちろん、電話が怖いと感じている新人・若手の方も、ぜひ参考にしてみてください。
新人が電話に出られない3つの理由
理由1:誰から・何の用件でかかってくるかわからない怖さ
ポイント:固定電話に出た経験がないまま、社会人になる人が多い。
若手世代はスマートフォンで電話をすることはあっても、固定電話に出たことがないという方が多くいます。社会人になって初めて電話に出たら、いきなり「あれどうなってる?」と聞かれたり、クレームの電話で怒鳴られたりする。自分では答えられないことを聞かれる恐怖を感じています。
理由2:一度の失敗をずっと引きずっている
ポイント:会社名の聞き間違いや保留の押し忘れで叱られた経験が、トラウマになっています。
よく聞くのは、会社名を聞き取れずに上司へ回したら全然違う人で、後から「違ったじゃないか」と叱られたというケース。保留にして取り次いだつもりが、保留を押し忘れていて電話が切れてしまい、叱られたという話もあります。
実は私にも経験があります。事務職時代、リーベルマンという社名を聞き取れず、上司に「ドーベルマンからお電話です」と取り次いでしまい、「犬か!」と突っ込まれました。それ以来、人の名前を聞くのがとても嫌だと思った時期があります。
失敗はつきものです。私は新人さんに「失敗してもいいから、まず1回出てみよう。練習してから出れば自信になるから頑張ってね」と伝えています。
理由3:練習する機会がない
ポイント:研修で一度習っただけでは、現場ですぐには実践できません。
新入社員研修では、ビジネスマナー研修の一部として電話応対を学ぶことがあります。しかし、そこで少し習っただけで現場ですぐできるかといえば、なかなかできません。職場に戻ってから自分で勉強したり、上司と一緒に練習したりする機会がないため、電話に出る勇気が出ないのです。
電話は慣れが重要です。私自身も新人時代から少しずつ慣れて、だんだん電話を取れるようになりました。
太田章代まずはマニュアル通りの言葉を覚えましょう
担当者が不在の場合など、定番の場面はまずマニュアル通りに言葉を覚えることが大切です。臨機応変な対応はそこから派生していきます。きちんと覚えることが、新人さんの自信につながります。
上司がやってしまいがちなNGな教え方
NG1:「とにかく出て、話して慣れて」と任せきりにする
「とにかく出て」が、新人にとって一番つらい言葉です。
出てもまた失敗するかもしれない、またお客様に怒られるかもしれない、という不安があるからです。まずは練習をして、自信を持たせてあげることが大切です。
NG2:「新人だから電話を取るのは当たり前」と押し付ける
電話を取る必要性を伝えることで、自然と電話に出られるようになります。
「新人は電話に出るのが仕事」「電話は登竜門」と言っている会社もあります。登竜門にすること自体は構いませんが、電話を取る理由をしっかり伝えてほしいのです。たとえば次のようなメリットがあります。
- お客様や取引先のことを理解できる
- 仕事の流れや全体像がわかる
- お客様のお名前を覚えるスピードが早くなる
「積極的に電話を取ることで、自分自身も早く成長できるよ」と伝えてあげてください。
NG3:失敗した直後に、人前で細かく指導する
注意するなら、人のいないところで伝えます。
みんなのいる前で叱られると、「恥ずかしい」「仕事ができない人と思われたら嫌だ」と感じます。「あの子はいつも電話で失敗する」「いつも感じが悪い」と思われたくないのは、誰にでもある気持ちです。
人前で注意されると、次に電話に出たときも「また注意されるのでは」と追い込まれた気持ちになり、変な敬語になったり、いつもの実力を発揮できなくなったりします。
相手の尊厳を守り、やる気を引き出すためにも、人のいないところで「ここをこうすると、もっと良くなるんじゃない?」と伝えましょう。次からもまた電話に出たいという気持ちになります。最終的な目的は、新人が積極的に電話を取るようになることです。言いたい気持ちはわかりますが、場所と言い方に気をつけて指導しましょう。
新人が電話に慣れる4段階の教え方
一気に詰め込まず、4段階に分けて教えることをおすすめします。少し手間はかかりますが、これをやるだけで、新人は自信を持って電話に出られるようになります。
第1段階:先輩の電話を観察してもらう
ただ横で聞かせるのではなく、「観察ポイント」を伝えてメモを取ってもらいます。
「最初になんと名乗っているか」「担当者が不在のときはどのように話しているか」といったポイントを伝えて観察してもらいます。新人さんは「こうして、ああして」と言われても、なかなかイメージがつきません。まずは上司・先輩が背中を見せることが大切です。これは電話に限らず、ほかの指導でも同じです。
観察ポイントはたくさんあるので、上司がチェックリストを作って事前に渡しておくと、新人さんも意識して見たり、メモを取ったりしやすくなります。
第2段階:台本を見ながら社内で練習する
最初は「名乗る」「相手の名前を聞き取る」まででも十分です。
練習不足が自信をなくさせてしまいます。最初から難しいことをする必要はありません。まずは簡単な取り次ぎから始めましょう。たとえば次のようなやりとりです。
新人:「お電話ありがとうございます。山田商事の佐藤でございます。」
お客様役:「いつもお世話になっております。アイキャリアの太田と申します。恐れ入りますが、営業部の田中様はいらっしゃいますか?」
新人:「営業部の田中でございますね。少々お待ちいただけますか。」
これができるようになったら、取り次ぎの方法など、少しずつ段階を上げていきます。
第3段階:先輩が隣にいる状態で実際の電話を取る
「何かあったら保留にして、すぐ先輩や上司に確認していい」という状態が、心の安心になります。
わからないことを聞かれてあたふたし、パニックになってしまう方もいます。毎日10分も20分も付き添う必要はありません。1日少しの時間でも、「大丈夫だよ。あなたならできるからね」と隣で見ているだけで、やる気は変わってきます。
過保護に思われるかもしれませんが、電話を取らない人は本当にずっと取りません。新人に取らせたい上司・先輩が電話に出るのを我慢していても、5回、6回と鳴り続けて結局根負けして上司が取る——そんな困った話をよく聞きます。
取るまで我慢比べをするのではなく、きちんとサポートしてあげること。そこまでして初めてできるようになる人も多いのです。
第4段階:1人で取った後に、短く振り返る
反省会のような大げさなものではなく、小さなPDCAを回すイメージです。
「ここはできたね」「ここはできなかったから、次はどうする?」と簡単に振り返ります。小さなPDCAをくるくる回すことで、だんだん上手になっていきます。
自信がないから電話に出られないのです。「声がハキハキして聞き取りやすくなったね」「お客様への言葉遣いが丁寧で良かったね」など、まずは褒めてあげてください。
職場でできる電話応対の練習方法3つ
練習1:朝の5分でテーマ別に練習する
朝礼後の5分、テーマを絞って繰り返し声に出します。
忙しくてロールプレイングの時間が取れないという声をよく聞きますが、短時間でも効果があります。たとえば次のように曜日ごとにテーマを決めます。
- 月曜日:担当者が不在の場合
- 火曜日:伝言を承った場合
もっと具体的に、「聞き取れなかったときは何と言えばいいか」というテーマにするのもおすすめです。答えは「恐れ入りますが、もう一度御社名とお名前を伺ってもよろしいでしょうか」。
このフレーズは聞いただけではすぐに言えるようになりません。繰り返し声に出して練習することで、いざというときにパッと言葉が出てきます。
実際の電話では、何を言えばいいか言葉が出てこないことがたくさんあります。狭いテーマで小さなフレーズを重点的に練習すれば、5分でも積み上がり、1か月後、1年後には電話が上手になっています。
練習2:よく電話がかかってくる会社名を覚えておく
社名を知っていれば、一部しか聞き取れなくても取り次げます。
相手が早口だったり声が小さかったりして、「恐れ入りますが、もう一度」と聞き返してもまた聞き取れない。何回聞けばいいのかと遠慮してしまうこともあります。
私も新人の頃、相手が早口すぎて社名の一部の音しか聞き取れず、上司に「すみません、この音がつく会社の方からお電話です」と伝えたことがあります。
すると上司は社名を知っていたので「ああ、オリエンタルデベロッパーね」とすぐにつないでくれました。よく電話がかかってくる会社を頭に入れておくと、とても役に立ちます。
また、お客様は誰しも丁寧に扱われたいという気持ちを持っています。常連のように電話をくださる方を知らないと、「失礼だな」と思われてしまうこともあります。その意味でも覚えておきましょう。
練習3:自分の電話を録音して聞いてみる
私が最もおすすめする、気づきが一番多い練習方法です。
自分の電話を聞くと、声の大きさ、話すスピード、言葉遣いなど、たくさんの気づきがあります。
- 自分ではゆっくり話しているつもりでも、実は早口だった(録音すると早口だと気づく方が多いです)
- 明るい声のつもりが暗かったので、ワントーン上げて出ないとお客様に失礼だと気づく
- 敬語がたどたどしいと気づく
2人でロールプレイングをするだけよりも、実際に自分の声を聞くほうが「こんな声のトーンだったんだ」という気づきがたくさん出てきます。
まとめ
新人が電話に出られない姿を見て「やる気がないのでは」と思ったり、「電話に出なさい」と押し付けたりするのではなく、出られるように道筋をつくってあげるのが育成です。
育成担当者に求められるのは、新人に「勇気を出して電話に出て」と言うことではなく、安心して電話に挑戦できる環境を整えることです。新人が変わることを求める前に、教える側が教えるべきことをしっかり教えましょう。毎日少しの時間でもいいので、教える時間をつくり、練習に付き合ってあげてください。

